【映画コラム】109シネマズMM横浜閉館のお知らせに併せて、横浜の映画館をちょっと考えてみる。


横浜市西区みなとみらいのGENTO YOKOHAMAに入店していた、109シネマズMM横浜(運営:東急レクリエーション)が、11月1日に来年1月25日をもって閉館することを発表した。
みなとみらい地区といえば、99年にワールドポーターズ内にオープンしたワーナーマイカルシネマズみなとみらい(現:イオンシネマみなとみらい)、そして2010年に桜木町駅前にオープンしたブルク13を擁する、ひとつの商圏にシネマコンプレックスを3つ持つ、珍しいエリアであった。(同様に関東圏では川崎に3つ、来年の春には新宿にも3つ目のシネコンが誕生する)
運営会社である東急レクリエーションは近年、都内に所有していた多くの古くからの劇場を手放している。03年に閉館した渋谷東急文化会館を皮切りに、移転先であった渋谷東急、池袋東急、上野東急。そして2014年には映画興行の中心であった有楽町の丸の内ルーブルを閉館させ、2014年末には国内最大キャパシティを誇る新宿ミラノ座を閉じる。
それでも、2005年に109シネマズMM横浜の近隣の横浜駅前にあった相鉄ムービルを自社運営に継承するほか、2009年には国内初のIMAXデジタルシアターをオープンさせ、2015年には二子玉川に新劇場をオープンさせるのである。
では、何故109シネマズMM横浜を閉館させるのであろうか。


みなとみらい地区の多くは、しばらくの間更地の状態が続いていた。60年代に再開発計画がはじまり、93年のランドマークタワー竣工で本格的に重要な観光地に発展したみなとみらい地区ではあるが、本来であれば2000年頃にすべての開発計画が完成する予定であった。しかしながら、あらゆる 頓挫などの問題があったため、恒久利用施設を除き、区画ごとに土地の貸し出しを行い、10年の利用期間を設けて暫定的に利用されていた。
そのため、99年にオープンしたジャックモールは、3年間の延長が認められたものの2012年に閉鎖。この109シネマズMM横浜が入店するGENTO YOKOHAMAも同様に、2014年の11月で暫定利用の期限が切れるのである。
結果として、横浜市内では2件目となる、シネマコンプレックスの閉館という事態が発生するのである。
そういえば2000年代中頃に、みなとみらい地区に新しい商業施設が建設され、その中にシネコンが作られるという話もあったが、それは頓挫しており、もしそれが作られていたらかなりこのエリアの様相も変わっていたのであろう。もしかしたらブルク13も作られなかったのではなかろうか。そのブルク13も、ティ・ジョイと松竹マルチプレックス、東急レクリエーションの共同事業であるから、よく考えてみたら東急のシネコンがふたつも同じ商圏にあるということになる。しかし、それも来年の1月までのことだ。



近年、建物の老朽化・デジタル上映システムの導入・映画離れによる経営難などあらゆる面で映画館の閉館が話題にあがる。
それでも、シネマコンプレックスの閉館というのは特段の事情が無い限り、まだそれほど例のない事態である。
たとえば大阪岸和田にあったワーナーマイカル東岸和田の閉館は、近隣にできたユナイテッドシネマの影響とも言われたが、老朽化が原因と言われている。おなじく大阪では高槻でTOHOシネマズの閉館、奈良県橿原では3つのテナントが競合していたが現在では1館のみ存続している。
一方で関東圏ではシネマコンプレックス日本上陸の地とも言われている神奈川県海老名の2つのシネコンや、埼玉県熊谷の2つのシネコンは巧く共存を図っているし、一つの駅を中心に歩いて10分以内にすべて回ることができる川崎の3つのシネコンは、都心部で上映しているミニシアター作品や中規模作品をどこかしらで上映するなど、作品の幅広さで共存を図っている。


今回の109シネマズMM横浜の閉館は、横浜市内のシネコンではMOVIX本牧以来のこととなる。96年にオープンしたマイカル松竹本牧(のちにMOVIX本牧となる)は、九大ロードショー都市である横浜への出店でありながら、マイカル松竹の運営として大手会社との摩擦を避けるだけでなく、 立地条件による商圏の違いという都合もあってか、近隣の映画館との間に大きな影響が現れることはなかった。
98年頃、横浜駅前には相鉄ムービル、横浜西口名画座。関内駅の馬車道沿いに5つの劇場を有する横浜東宝会館。伊勢佐木町モールには関内駅側から関内アカデミー、ニューテアトル、シネマリン、ピカデリー、オデオン座、松竹セントラル、オスカー、東映とたくさんの映画館が点在していた。
99年にみなとみらい地区に堂々とオープンしたワールドポーターズにワーナーマイカルチェーンの劇場が入ると、東宝会館を始めとする関内エリアの劇場が優先的な配給を得ていたために、ワーナーマイカルみなとみらいのオープン時には新作が配給できないという事態が発生する。しかしわずか数ヶ月で、ソニーピクチャーズの配給新作が封切られると、ほかの各社もワーナーマイカルみなとみらいでの新作配給を開始。これを機に、一気に伊勢佐木町エリアの観客がみなとみらいへ流れていったのである。
それまで、横浜東宝会館に封切り初日に行くと、満席であることも珍しくなかったが、いつのまにか劇場はいつ行ってもガラガラという寂しい状態になったのである。

それから15年、今現在の伊勢佐木町に残る映画館はニューテアトル、そして10月に休館し、12月にリニューアルオープンするシネマリンの2館だけになった。
もっとも、ワーナーマイカルみなとみらい(現:イオンシネマみなとみらい)の最大スクリーンのキャパシティは400なので、映画が流行っていた頃ならそれほど大きなダメージにはならなかったのだろうとは、思うが、もうそればっかりは仕方が無い。

気付いた頃にはマイカル松竹本牧だった、MOVIX本牧も2011年に閉館していたが、これは2004年に開通したみなとみらい線が本牧の方まで延伸しなかったために、それまでも良くなかった集客がさらに減っていったための経営不振と聞いた。たしかに2005年頃に平日に観にいくと、小屋に客は一人だけということも珍しくはなかった。

一方、横浜駅前の映画館は(東口のデパート内にあった子供向け映画館は別として)、相鉄ムービルが東急の傘下で奮闘しているために、あまり変わった印象は無い。それでも、横浜西口名画座が、2004年にヨコハマシネマソサエティとしてリニューアルオープンした直後、台風で浸水し、再起不能となったことは、横浜の映画館に大きな痛手であった。

今現在横浜市内には前述した劇場や、ふたつのTOHOシネマズ(上大岡、ららぽーと横浜)のほか、地下鉄のセンター南駅に1998年にオープンした老舗109シネマズと、隣駅に2007年にオープンしたイオンシネマがある。それぞれが割と異なる商圏にあるからこそ、競合は少ないにしても、今までの映画館に続いてシネマコンプレックスまでも閉館する時代が訪れると思うと、何だかとてもやるせなさを感じるばかりである。





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